あいさつ
私たちの身の回りにはエネルギーがあふれています。重力、熱、振動、光・・・太陽電池はこのうち「光」のエネルギーを電気の姿に変えるデバイス(装置)です。私たちがいる地球には太陽から1m2あたり1kWもの光のエネルギーが届いています。たった1m2に降り注ぐこのエネルギーを仮に100%つかうことができたとしたらいったい何ができるでしょう?10畳くらいの部屋なら夏の暑い日の冷房用にエアコンを動かすことができるでしょう。さらに、冷蔵庫で冷やしたジュースを飲みながら50型の大きな液晶テレビをみることだってできます。"今そこにあるエネルギー"を使わない手はありませんよね?太陽電池は多くの発電装置にとりいれられているようにぐるぐる回る動作機構がなく、動いている部分がないのでとっても静かですが、実は光を浴びて太陽電池の中では電気の担い手(キャリア)が生まれ、移動しています。いかにキャリアを生まれやすくするか、いかにキャリアがスムーズに動けるようにするか、これらが太陽電池の性能を大きく支配します。そのためにはどうすればよいでしょう?太陽電池を構成する材料やその構造に工夫をしなければなりません。これまでに様々な太陽電池が提案されています。一方で、太陽電池を作ること自体が環境にやさしくなければなりません。ありふれた材料をすこしの量で作れることが環境に優しいと言えるでしょう。
本研究室では、1996年に当時の長岡高専片桐裕則教授が世界で初めて実現したCZTS薄膜太陽電池の実用化を目指した研究を行っています。What is "CZTS" ? CはCopper(銅), ZはZinc(亜鉛)、TはTin(スズ)、SはSulfur(硫黄)の頭文字です。化学式ではCu2ZnSnS4です。何がよいって?汎用材料と言われるありふれた材料なのです。そして、太陽の光を効率よく吸収されると考えられているバンドギャップエネルギーという物質固有の値が1.5eVとされ、薄い膜厚(1μm =髪の毛の1/80程度)で高いエネルギー変換効率が期待されているのです。一方で未だわからないことがたくさんあり、実験をすればするほど知りたいことがたくさんでてくる毎日です。太陽電池の作製にはCZTSだけでなく電池を構成する様々な材料の物性も非常に重要です。そしてそれらは残念ながら目に見えない世界で起きている現象で支配されています。そのため材料の特性を知り、制御するために様々な分析手法を駆使し、「何が起きているか?」を推定していきます。そして様々な成膜や処理方法を駆使して「こうすればきっと性能が良くなるだろう」という条件で太陽電池を構成、評価を行います。期待通りに行かないことの方が多いですが、これらの繰り返しで少しずつ、少しずつですが徐々に材料の特性を知り、制御することができるようになります。このように新しい太陽電池づくりは、材料物性が最終製品としての電池特性にダイナミックに影響を与える実に面白いものづくりの世界です。チャンピオンデータを目指す一方で、実用化を目指した安定した製造方法の開発にも力をいれていきたいと考えています。
小・中学生・保護者に向けて
私達の研究室では「あたらしい太陽電池」の研究開発を行っています。研究では白衣を着てさまざまな装置を使って太陽電池をつくり、その過程で様々な分析装置をつかって太陽電池の特性を調べています。この過程を経て「つくる」「しらべる」そして「かんがえる」を繰り返し、よりよいモノを実現する力を身につけていってもらいたいと考えています。未来のエネルギーを私たちと一緒に創りだしてみませんか?
指導職員
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島宗 洋介
SHIMAMUNE,Yousuke - 准教授
研究室概要
研究テーマ紹介
・汎用材料(Cu,Zn,Sn,S)を用いた次世代型薄膜太陽電池の研究開発
・ 真空装置を用いた薄膜作製技術
・ 薄膜の組成評価
・ 薄膜の構造評価
・ 薄膜の光学的評価
・ 薄膜の電気的評価