研究室紹介「耳音響認証」音響工学研究室
音響工学研究室で行っている研究を紹介します。
音響工学研究室では、耳の音響特性を用いて個人認証をおこなう耳音響認証を開発し、現在NECと実用化に向けた研究開発を行っています。TVやニュースで紹介されましたので皆さんも耳にされたかもしれません。
では、そもそも「耳音響認証」とはどのような技術なのでしょう?
まず、皆さんバイオメトリクス認証というのを知っていますか?最近では携帯電話等の操作を解除するにあたり、指紋や顔を用いるものが増えてきました。このように指紋や顔や瞳(虹彩)等の人それぞれのもつ人間の特徴をパスワードや鍵の代わりに使うシステムのことを、バイオメトリクス認証と呼びます。パスワードや物理的な鍵とちがってなくしたり他人に使われることがないので、安全な方法であるとして最近はいろいろなところで用いられるようになってきました。
本研究室で開発した、耳音響認証とは、耳の音響的な特性をもちいて誰かを判別するバイオメトリクス認証となります。ユーザはイヤホンを耳に装着するだけで誰かがわかるので大変使いやすい認証だと思っております。
そして、画期的な認証方法として、注目を集めています。イギリスのBBCのNEWSにも紹介されていました。
http://www.bbc.com/news/technology-35766069
なぜ、画期的なのでしょう?
画期的なのは2つあります。
まず一つ目
それは、指紋や顔などを用いたバイオメトリクス認証では、認証ごとにいちいち指を指紋スキャナーに通したり、顔をカメラに向けたりという認証のための動作が必要でした。しかし、本研究室の開発した耳音響認証では認証動作はイヤホンを耳に着けるだけです。
さらに!「イヤホンをつけている間はずっと認証し続けることが可能!」 これが画期的だったのです。専門的な言葉では「常時認証」と呼びます。いままでの認証では、一度認証してしまうとその後に他人と入れ替わってもそれを見破ることはできませんでした。しかし、この耳音響認証システムでは、イヤホンをつけている間はずっと認証しつづけることができます。途中でなり替わるなどのことができないのです。
そして、2つ目
指紋や顔などと違って、「偽造できない!」 スパイ映画では、グラスについた指紋から偽造した指紋をつかってゲートを侵入したりというのがあったりしますが、実は本当に偽造指紋というのが存在しているのです。また、顔による認証でも、スパイによって勝手に写真をとられてしまい。認証カメラの前に写真をということが考えられます。
これに対して、耳音響認証は耳の中の特性をつかっているので、偽造することがむつかしいです。スパイみたいな人が「ちょっと、耳の中の型を取らせてもらっていいですか?」なんて言って来たら怪しすぎますから、実際偽造はほぼ不可能だと思われます。
どんなところに使えるのでしょう?
例えば、警備員やセキュリティの高い場所でのオペレータ等が考えられます。例えば、入口ゲートで認証した後も、耳音響認証により入れ替わる等を防ぐことができるので、ずっとセキュリティレベルの高いままでいることができます。あとは、音楽配信などで購入した人しか音楽が聴けないようにしたり。普及したら振り込み詐欺なんかも防ぐことができるかもしれませんね。活用の可能性はいろいろ広がると思います。
現在は、指紋には及びませんが実用上十分のレベルでの認証が可能となってきていると思います。研究室では、認証レベルを上げるための方法を研究したり、さらに耳音響認証を欺く悪いことをする人がいても検知できるような方法を研究しています。
興味のある人は、ぜひ研究室に来てみてください。耳音響認証のデモを体験することができます。イヤホンをつけるだけで、誰であるかを当てることができます。
下の動画は共同研究を行っているNECが、耳音響認証と屋内位置測位技術とを使ったPRビデオです。
耳に装置をつけるだけで、なんでもできてしまう時代が来そうですね。